気温か下がり、体が寒さを感じると体温を逃がさないように全身の血管が収縮します。そのため血圧が上がりやすくなります。
血圧は、常に一定ではなく、日内変動や生活習慣の変化によっても変動します。一般的に、起床時には高く、夜間には低くなります。また、気温や運動、食事、喫煙、ストレスなどによっても血圧は変動します。
血圧を毎日、測定することにより、体調管理、重大な病気のリスク回避ができます。
今回は血圧と血圧計の基礎知識をわかりやすく解説していきます。ぜひ、正しい使い方で、家庭血圧の測定を習慣づけましょう。
血圧とは?
血圧とは、心臓から送り出された血液が血管壁にかかる圧力のことを指します。血圧は、心臓が1回の拍動で全身に送り出す血液量(心拍出量)や血管のしなやかさ(弾力性)ほか、血液が血管に流れ込む際の末梢血管の抵抗力(血管抵抗)、血液の粘稠度などによって決まります。
血圧=心拍出量×抹消血管抵抗
- 単位:mmHg(ミリメートル・エイチ・ジー)圧力の単位です。
- 心拍出量
心臓が1分間に送り出す血液量のことです。
- 抹消血管抵抗
全身の末梢血管の抵抗のことです。
血管の太さ:血管が太くなると、抵抗は低くなります。
血管の弾力性:血管の弾力性が低下すると、抵抗が高くなります。
血管の収縮:血管が収縮すると、抵抗が高くなります。
- 循環血液量
心臓から送り出された血液のうち、全身の血管内に存在する血液量のことです。
- 血液の粘稠度
血液が流れにくさを表す指標です。(ドロドロした状態)
- 動脈の弾力
心臓から送り出された血液を全身に送り出すために、血管が伸び縮みする能力のことをいいます。動脈の弾力性が失われると、血管が硬くなり、血液の流れが悪くなります。
血圧はさまざまな影響を受けて変動します。
血圧は、心臓が収縮して血液を送り出すときに最も高くなり、心臓が拡張して血液をため込むときに最も低くなります。このため、血圧は、収縮期血圧と拡張期血圧の2つの数値で表されます。
収縮期血圧は、上の血圧とも呼ばれ、心臓が収縮して血液を送り出すときに血管壁にかかる圧力です。拡張期血圧は、下の血圧とも呼ばれ、心臓が拡張して血液をため込むときに血管壁にかかる圧力です。
例えば、収縮期血圧が120mmHg、拡張期血圧が80mmHgの場合は、「120/80」と表されます。
血圧の範囲
血圧の範囲は、以下のとおりです。
診療室血圧(病院や診療室で測定した血圧値)
- 正常:収縮期血圧120mmHg未満、拡張期血圧80mmHg未満
- 正常高値血圧:収縮期血圧120〜129mmHg、拡張期血圧80mmHg
- 高血圧:収縮期血圧130~139mmHgmmHg以上、拡張期血圧80mmHg以上
家庭血圧(自宅で測定した血圧値)
- 正常:収縮期血圧115mmHg未満、拡張期血圧75mmHg未満
- 高値血圧:収縮期血圧115〜124mmHg、拡張期血圧75mmHg
- 高血圧:収縮期血圧125~134mmHg以上、拡張期血圧75~84mmHg以上
成人における血圧値の分類(mmHg) | ||||
分類 | 診察室血圧 | 家庭血圧 | ||
収縮期血圧 | 拡張期血圧 | 収縮期血圧 | 拡張期血圧 | |
正常血圧 | <120 かつ <80 | <115 かつ <75 | ||
正常高値血圧 | 120-129 かつ <80 | 115-124 かつ <75 | ||
高値血圧 | 130-139 かつ/または 80-89 | 125-134 かつ/または 75-84 |
診療室血圧と家庭血圧の違いは、測定場所によって、測定値が異なることです。
診療室血圧は、診察室の環境によるストレスや緊張によって、血圧が上昇すると考えられています。そのため、家庭血圧よりも高値になる傾向があります。
家庭血圧は、リラックスした状態で測定されるため、診察室血圧よりも正確な血圧値を反映していると考えられています。
また、年齢や性別によっても、血圧の範囲は異なります。
生活習慣の改善や健康管理の為、自宅での血圧測定を行うことが大切です。
高血圧は、脳卒中や心筋梗塞などの重大な病気のリスクを高めるため、注意が必要です。
自律神経系による血圧調整
自律神経系による血圧調整とは、交感神経と副交感神経の働きによって、血圧を調節する仕組みのことです。
交感神経が優位になると、心臓の収縮力が強くなり、心拍数が速くなります。(心拍出量が増加)また、抹消血管が収縮することで、血管抵抗が高まり、血圧が上昇します。
副交感神経が優位になると、心臓の収縮力が弱まり、心拍数が遅くなります。(心拍出量が減少)また、血管が拡張することで、血管抵抗が低下し、血圧が下がります。
このように、自律神経系による血圧調整は、身体の状態や環境の変化に合わせて、血圧を適切に調節する役割を果たしています。
血圧の日内変動
血圧は、1日の間にも一定ではなく、変動します。この変動を血圧の日内変動といいます。
通常、血圧は午前中に最も高くなり、午後から夜にかけて低下します。この変化は、自律神経系の働きによって引き起こされます。
午前中は、交感神経が優位になり、血圧が上昇します。これは、起床して活動を始めるために、体に必要な血液を送り出すためと考えられています。
午後から夜にかけては、副交感神経が優位になり、血圧が低下します。これは、休息や睡眠のために、血圧を下げることで、心臓や血管に負担をかけないようにするためと考えられています。
また、睡眠時にも、血圧は低下します。これは、副交感神経が優位になり、心拍数や血管抵抗が低下するためと考えられています。
また、睡眠不足や不規則な食事、運動不足、ストレス、気温の変化などによっても、血圧の日内変動が乱れることがあります。
早朝高血圧
早朝高血圧とは、起床後1~2時間以内の血圧が、収縮期血圧135mmHg以上、拡張期血圧85mmHg以上である状態です。起床時に交感神経が過剰に興奮することで、血圧が急激に上昇することがあります。心臓や末梢血管に負担がかかり、脳・心血管系の発作のリスクを高めるため、注意が必要です。
早朝高血圧は、健康診断や診察では発見されにくいので、自宅での血圧測定が重要と言われています。ぜひ、正しい使い方で、家庭血圧の測定を習慣づけましょう。
ヒートショック
入浴時におけるヒートショックは、血圧の急激な変化によって引き起こされると考えられています。暖かい脱衣所から寒い浴室に移動した際には、体温を維持するために、血管が収縮します。このとき、血圧が上昇します。また、温かいお湯に浸かると、血管が拡張して血圧が低下します。このように、入浴中は、血圧が急激に上昇したり低下したりすることがあります。特に、高齢者や持病のある人は、体温調節機能が低下しているため、血圧の変化が大きくなりやすく、ヒートショックになりやすいと考えられています。入浴時には、脱衣所と浴室の温度差を小さくする、入浴時間を短くする、適度に休憩をとるなど、ヒートショックの予防対策をしっかりと行うことが大切です。
正しい血圧計の使い方
測定は朝、夜2回行います。(毎日、決まった時間に測定します。)
朝:起床後1時間以内、排尿後朝食前に
夜:就寝前に
注意事項:血圧のお薬を服用している人は、服用前に測定してください。また、測定前1時間は食事や運動、入浴は避けてください。
具体的な手順は、以下の通りです。(腕帯式の場合)
1. 測定前は、5分間安静に過ごす。
測定前に、5分間安静に過ごすことで、血圧が安定します。
2. 測定時は、椅子に座り、足を組まず、背もたれに軽くもたれる。
椅子に座り、足を組まず背もたれに軽くもたれると、リラックスした状態で測定することができます。
3. 測定時は、腕を心臓の高さに上げる。
腕を心臓の高さに上げることで、血液が心臓に戻る流れを妨げないようにします。
4. 血圧計の腕帯を巻く。
血圧計の腕帯は、心臓の高さに位置するように巻きます。腕帯がきつすぎると、血流が妨げられ、血圧が正確に測定されません。また、腕帯が緩すぎると、血圧が低めに測定されてしまいます。
5. 血圧計のボタンを押して、血圧を測定する。
血圧計のボタンを押すと、血圧が測定されます。測定中は、動かないようにしましょう。
6. 測定結果を記録する。
測定結果は、日時、収縮期血圧、拡張期血圧、脈拍を記録しましょう。記録することで、血圧の変化を把握しやすくなります。
また、血圧計を使用する際には、以下の点に注意しましょう。
- 血圧計は、定期的にメンテナンスを受ける。
- 血圧計の使用説明書をよく読む。
- 血圧計が正しく作動しているかを、定期的にチェックする。
血圧計の種類
血圧計には、手首式や上腕式など、さまざまな種類があります。また、価格は、種類や測定方法によって異なります。
オムロン 血圧計 HPはこちら(血圧表のダウンロードもできます)
- 上腕式血圧計(おすすめ)
上腕にカフを巻いて、血圧を測定するタイプです。最も一般的で、家庭用としても医療用としても広く用いられています。
- 手首式血圧計
手首にカフを巻いて、血圧を測定するタイプです。上腕式血圧計に比べて、手軽に測定できるというメリットがあります。
- スマートウオッチ式血圧計
外出時でも、気軽に測定可能です。また、スマホと連携して測定結果を保存できます。(数値に誤差が出やすいため、あくまでも目安に)
まとめ
血圧は、健康状態を把握する上で重要な指標です。生活習慣の改善や健康管理の為、定期的に血圧を測定し、血圧が高い場合は、早めに治療を行うようにしましょう。また、血圧計は操作が簡単で、医療機器認証を受けている使いやすい血圧計を選びましょう。