2025年には、団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となることで、日本は超高齢化社会を迎えます。このことは、社会保障費の負担増や労働力不足などのさまざまな問題を引き起こす可能性があります。
2025年問題とは?
2025年問題とは、団塊の世代(1947~1949年生まれ)が75歳以上の後期高齢者となることで起こる、社会保障費の負担増や労働力不足などの問題のことをいいます。
2025年には、団塊の世代約800万人が後期高齢者となります。これは、日本の総人口の約12%に相当し、国民の4人に1人が後期高齢者となる超高齢化社会を迎えることになります。これにより、社会保障費の負担が増大し、労働力不足が深刻化するなどの問題が予想されています。
具体的には、以下の問題が懸念されています。
社会保障費の負担増
後期高齢者になると、年金や医療費、介護費などの社会保障費の支出が増えます。2025年には、社会保障費の総額がGDP(国内総生産)の35%を超えると予測されており、社会保障制度の維持が困難になる可能性があります。現役世代は国民健康保険や健康保険など何かしらの保険に加入しており、医療費の自己負担は3割です。残りの7割は保険料からまかなわれています。75歳の以上が加入する後期高齢者医療制度では、自己負担額は1割(一定以上の所得がある人は「2割」)となります。残りの9割は税金でまかなわれており、現役世代の負担となります。さらに高齢者になるほど病院や薬の使用も増えるため、後期高齢者の1人当たりの年間医療費は平均92.1万円となっており、若人の1人当たり年間医療費平均22.0万円の4.2倍となっています。後期高齢者医療費の特性(令和2年度)
つまり、2025年には、医療費として多額の税金を使う75歳以上の人々が増えるということです。
高齢者が増えると老人ホームなどの介護需要が増えるため、介護費用の財源がひっ迫されます。介護費用の半分は国・都道府県・市町村でまかなっていますが、残りの半分は税金。(介護保険料)加えて、老人ホームに入るお金がなく、生活保護に頼る高齢者も増えてくると思いますが、当然その生活保護費用も現役世代の負担です。
労働力不足
団塊の世代が退職を迎えることで、労働力人口が減少します。2025年には、労働力人口が1億2,600万人から1億1,500万人へと約11%減少すると予測されており、経済成長の鈍化や社会の機能不全などが懸念されています。
地域経済の衰退
団塊の世代は、地方部に多く居住しています。彼らが退職を迎えることで、地方部ではさらに人口減少と少子高齢化が進み、地域経済の衰退が懸念されています。
2025年問題に対する政府の対策
政府は、2025年問題に対応するために、以下の対策を進めています。
- 社会保障費の改革
社会保障費の負担増を抑えるため、以下の対策が進められています。
年金制度・医療費・介護費の改革
- 働き方の多様化の推進
労働力不足を解消するため、以下の対策が進められています。
女性の活躍推進・高齢者の活躍推進・外国人労働者の受け入れ拡大
- 地域包括ケアシステムの構築
重度の介護が必要になっても、住み慣れた地域で人生の最後まで自分らしい生活ができるよう、以下の対策が進められています。
地域の医療・介護・福祉の連携・協働の強化・住まいと介護の一体的なサービスの提供
2025年問題とドラッグストア
2025年問題は、ドラッグストアにも大きな影響を及ぼすと考えられます。
- 健康寿命の延伸
健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のことです。健康寿命が延伸すれば、高齢者の医療・介護の需要が増加します。ドラッグストアは、医薬品や化粧品、日用雑貨など、高齢者の生活に必要な商品を幅広く取り扱っています。そのため、健康寿命の延伸に伴い、ドラッグストアの需要は高まると考えられます。
また、商品棚の高さ、POPの字の大きさ、バリアフリー、トイレ、接客、おむつ、パッド、軽失禁用品の拡大、予防医療など店舗側の見直しも必要と考えられます。
- 地域包括ケアシステムの構築
地域包括ケアシステムとは、重度の介護が必要になっても、住み慣れた地域で人生の最後まで自分らしい生活ができるよう、医療・介護・福祉の連携・協働によって支援するシステムです。ドラッグストアは、在宅医療や訪問看護などのサービスを提供する医療機関と連携することで、地域包括ケアシステムの構築に貢献することができます。たとえは、介護用おむつ、日用雑貨、医薬品の配達をすることにより、高齢者の生活を支える役割を担うことができるのではないでしょうか。
個人でできる具体的対策(マネーリテラシーの向上)
2025年問題への対策において、マネーリテラシーの向上は重要な課題です。
マネーリテラシーとは、お金の知識や理解力、活用能力のことです。マネーリテラシーが高い人は、お金をうまく管理し、将来の生活を豊かにするための計画を立てることができます。
マネーリテラシーを高めるためには、以下のようなものが有効です。
- お金に関する知識を身につける
お金の基本的な知識や、資産形成や家計管理などの実践的な知識を身につけることが大切です。
- 家計簿をつけるなど、家計管理の習慣をつけるお金の使い方を工夫する
収入と支出のバランスを把握し、無駄な支出を減らすことで、家計をやりくりしやすくなります。
- 副業をし、収入を増やす
副業で収入を増やすことで、老後の生活資金の準備や、現在の生活をより豊かにすることができます。パソコンやスマートフォンがあればインターネットを通じて、ランサーズ・クラウドワークスなどで様々な仕事が探せます。
- 資産運用やリスクに関する知識を身につける
新NISA、iDeCoなどを活用し、資産形成に取り組むことが重要です。
新NISA:2024年以降、NISAの抜本的拡充・恒久化が図られ、新しいNISAが導入される予定です。
ポイント!
- 非課税保有期間の無期限化
- 口座開設期間の恒久化
- つみたて投資枠と、成長投資枠の併用が可能
- 年間投資枠の拡大(つみたて投資枠:年間120万円、成長投資枠:年間240万円、合計最大年間360万円まで投資が可能。)
- 非課税保有限度額は、全体で1,800万円(成長投資枠は、1,200万円。また、枠の再利用が可能。)
- 注意点としては、新NISAを活用して資産形成を行う場合でも、「元本割れ」のリスクはあります。
2024年からNISAがリ二ューアルしますが、過去の流れ(2014年は金融所得課税増税と同時にNISAの運用が始まった年)を鑑みると、前回同様、金融所得課税が上がる可能性あるといわれています。現状、株式などの金融商品から所得を得た、場合一律で20%の課税となっていますが、税率25%・30%に引き上げる案も出てきています。
iDeCo:国民年金や厚生年金に上乗せする形で、【個人型確定拠出年金】iDeCo
ポイント!
- 運用益が非課税
- 拠出した掛金は全額所得控除
- 受取時、年金形式なら公的年金等控除、一時金受取なら退職所得控除
- 拠出した掛金は「小規模企業共済等掛金控除」として年末調整や確定申告で所得から全額控除することができ、その年の所得が減ることで所得税と住民税を軽減することができます。 ※iDeCoに加入することで得られる節税効果も、職業・年収・掛金の金額などによって変動します
- iDeCoは節税効果が期待できるお得な制度ですが、いくつか注意点があります。ひとつは、拠出金額を割り込む「元本割れ」のリスクがある点です。また、iDeCoは原則として、60歳以降にならないとお金を受け取ることができない点もあげられます。
投資は生活を豊かにする手段であって、単に資産を増やせば良いというものではありません。将来を過度に重視して、今生活を切り詰めていては本末転倒です。余剰資金で始めましょう。また、新NISA、ideco共、長期資産形成を促す制度ですのである程度、先を見越した備えのために活用するのに向いています。
2025年問題は、個人の経済生活にも大きな影響を与える問題です。マネーリテラシーを高めることで、2025年問題への対応に備えることができます。
まとめ
2025年問題は、日本が直面する大きな課題です。政府や企業、個人が一体となって対策を講じていく必要があります。政府は、社会保障費の改革や、働き方の多様化の推進など、さまざまな対策を進めています。企業は、生産性の向上や、外国人労働者の受け入れ拡大など、人材不足への対応を図っています。個人は、長寿時代を見据えた資産形成や、健康管理など、自分自身でできることを進めていく必要があります。2025年問題は、私たち一人ひとりの意識と行動が問われる問題です。